<蜘蛛と蝶と蛾(裏話)>

・蜘蛛が、
「お前は何故、そうまでして約束を守ったのか?」
 と尋ねると、蛾はこう答えました。
「実は、わたくしたちは子供の頃から仲が良かったのです。
 蛹から出たのも全く同時でした。そのとき、驚いたことに、お互いの翅が全く違っていたのでした。私の翅は美しい色と模様をしていたのに、相手の翅は地味な色と模様だったからです。
 お気付きのように、私は元は蝶でしたが、美しい翅を纏う勇気がなかったので、蛾と翅を交換したのです。その証拠には、あなたのところに置いていった2本のアンテナの先が丸みを帯びていることがご覧になれると思います。
 もし、その翅を着けたまま飛んでいたら、鳥に襲われる運命にあったのは私の方だったでしょう。ですから、わたしのせい・・・」 
 そう言いかけて、蛾は目を閉じてしまいました。
 蜘蛛はそれからずっと、蛾と蝶の運命に思いを巡らせたのでした。