<きのこ>

・あなたと初めて、あの森に行ったときのことをおぼえていますか?

・A:「今年も木ノ子の季節になったね。」
 B:「木に生えてくるから、木ノ子っていうけど、ホントーの子供じゃない。」
 A:「今年は、マツタケの出来がいいらしいよ。」
 B:「マツとタケという名まえが付いてるから縁起物としては高級品の部類に入るけど、僕はシイタケの方が美味しいと思うね。」
 A:「この季節になると、毎年のようにドク木野子のニュースが出る。何とかならないの?」
 B:「無毒の木ノ子には、よく似た毒キノコがあることが多いから注意しないと。
    それと、天ぷらにすると味が分かりに難くなるから気づかないんだ。」
 A:「何か見分ける方法はないのかな。」
 B:「相当の経験を積まないかぎり、そう簡単には見分けられないさ。」
 A:「臭いとかでは?」
 B:「人間の嗅覚は、視覚に比べると大分劣ってるから。」
 A:「木ノ子が鳴いてくれたら、耳で聞き分けられるんだけど、それは無理か。」
 B:「1つだけ識別する方法はある。」
 A:「どんな方法?」
 B:「あんまり人には知られたくないんだけど、君だけには教えるよ。」
 A:「もったいぶらないで、早く!」
 B:「君がひと口だけ食べてみることさ。」